現在、テレビ朝日系列「世界の車窓から」でアイルランドを特集しています。なんでも4月までアイルランドを放送するのだとか。忙しくてまったく見れないし、5分番組をえんえん1ヶ月以上も視聴するのはかなり根気がいりますなあ。
シリーズ予約するか、DVD化されたら買うとか何か対策をたてねばと。
実は私も大の鉄道ファン。鉄道ファンには、写真をとりまくる「撮りテツ」・キップやグッズを集める「収集テツ」・ひたすら電車に乗る「乗りテツ」などに分類されますが、私はひたすら乗り、車窓を楽しみ、食堂車や駅弁で舌づづみを打つ「旅テツ」です。
かといって、最近巷で問題のマナー知らずのファンではありません。線路内に立ち入り進行妨害をするなど言語道断。
アイルランドは他の欧州各国に比べて鉄道が発達しているとは言えません。英仏にはユーロスターやTGV,独はICE,ベルギーはタリスといった看板列車がありますが・・・アイルランドは・・・・・・。
アイルランドの地形の特徴を考えていただければ、すぐおわかりだと思いますが欧州は基本的に大陸であって、国と国は陸地でつながっています。ですから国家間の移動には航空という手段以上に、鉄道という手段のほうがコスト的やアクセスビリティーの観点からメリットがあり古くから発展したわけです。
そのなかで、「移動する楽しみ」という付加価値の観点からオリエント急行などが登場し、時にそれは外交の舞台ともなり、鉄道のプレステージを高めました。
一方アイルランドは北海道ほどの面積、なおかつ人口動態もさほど激しくなく、道路が整備されているので必然的に鉄道はスローペースでの発展だったのです。
そのなかでも、海に囲まれた「エメラルドの島」ですから景勝地も多数あり、その車窓は現在放送されている「世界の車窓から」でも十分伝わってくると思います。
そんなアイルランドの鉄道のうち、今回はダブリンの通勤電車「ダート DART」、LRT「ルアス LUAS」、を紹介します。
ダートは、ダブリン市民の通勤電車です。私の知る限りセミクロス2M2TX2の8両組成が基本です。(一般市民の方にテツ用語を翻訳すると、8両編成が基本です。ラッシャアワーの際は京浜急行の快特のように4両増結して12両になることがあります)
雰囲気は・・・そうですねダブリン自体東京ほどの人の流れはありませんので、まあ湘南新宿ライナーや横須賀線みたいな感じでしょうか?
普通の電車ですが、サンドウィッチやソフトドリンクの販売もあり売り子さんがやってきます。(ギネスの販売はありません。パブでどうぞ。)
このへんがなかなかアイルランド的でいいなあと。
電車の色はやはりアイルランド・・・「緑」。いい感じでダブリンのコノリー駅から発着しています。
車両の半分は意外と知られていないのですが「東急車輛」で作製された電車なんです。
ちょうど京浜急行で金沢八景から金沢文庫に向かうと左手に大きな工場があり得体のしれない電車が沢山とまっていますが、そこが「東急車輛」の工場です。私のおばあちゃんが工場のすぐ近くに住んでいて、小学生のとき、いつもこの工場に遊びに行ってました。
「うお~この電車カッケー」と半年後にデビューする秘密の電車に心踊らせたものです。
この車両はダート・中距離電車の最新型です。ん、ナカナカスタイリッシュ、スーパービュー踊り子みたい(ほめすぎ?)この電車、なんと「ヒュンダイ HYUNDAI」(韓国)製です。
このように鉄道も各国受注合戦をしていることはダートを見ても一目瞭然なんですね。
ダブリンに行かれた際は是非ダートを乗って下さい。電車によっては京急VVVFインバータの「歌う電車」のモーターを搭載した(シーメンス製)電車に出会うことができます・・・テツブン濃い話でスミマセン。
さて次にご案内しますのはダブリン市民に愛されるLRT「ルアス」です。ルアスはアイルランド語で「SPEED」を意味するとか。
2004年に開通したこの可愛らしいLRT,似たような車両が鹿児島・広島・豊橋・富山などで走っていますから親近感も湧くのではないでしょうか?在来線の廃線跡を「再利用」した区間も多く、富山ライトレールにその生い立ちは似ているとも言えます。
とにもかくにもダブリンのクルマ渋滞はひどく、でその解決策のひとつとしてこのルアスが導入されました。そうですね、ちょうど沖縄に「ゆいレール」が導入される前の那覇市内道路状況とそっくりと考えてよいかと思います。
(LRTルアス運営会社VEOLIA公式HPより抜粋)~現在グリーンラインとレッドラインの2路線ですが近い将来来は多くの路線が開通する予定
ルアスビジョン
• LUAS network intends to remove over one million trips from the road network per year by 2016.
• LUAS avoided the net release of over 29,000 tons of CO2 in 2007.
• LUAS produces around 5 times less CO2 emissions than the cars which would be on the road without it
• 15,000,000 litres of fuel from cars have been saved in 2007.
• 24,000,000 car trips have not been made thanks to LUAS in 2007
• The LUAS represents:
-less air pollution
-less noise
-less vibration from road traffic
-less congestion/traffic jams (LUAS has its own dedicated tracks so it can move during peak. The LUAS has also priority in traffic)
http://www.luas.ie/
ルアスについて「これは書きたい!」というのは、車窓や沿線のガイドではありません。勿論それも大変ラブリーなのですが、なによりこの電車の運営方法なのです。
ルアスはフランスのベオリアトランスポールという会社が運営しています。
この会社の親会社ベオリアエンバイロメントは実はフランスの水事業会社、前身はフランス水道事業公社・・・平たく言えば「水道局」です。
エクソンやBP、ロイヤルダッチシェルという「石油メジャー」が存在するのは多くが知るところですが、上下水道事業にも「水メジャー」が存在します。
水?そんなのいくらでもあるだろ・・・日本人はそう思う人が多いでしょう。
しかし欧米に行って、例えばフランスではワインより水が高かったとか話は聞いたことがあると思います。
いわゆる後進国という国々が振興し発展すれば当然産業用水のほか飲料水も必要となり、近い将来深刻な世界的水不足が謳われてます。
つまり水産業は大変重要で人間が人間らしく生きていくための最重要インフラなのです。
日本では公的セクターが長い間上下水道事業を担ってきたという歴史があります。つまり民間に「水」をマネジメントするノウハウがなかったのです。自治体運営のためノウハウ蓄積のあしかせにもなります。
そのようなヌルイ状態で世界では民間の水メジャーが台頭。上下水道を垂直統合的にコントロールするようになりました。
垂直統合とは施設保有・サービス設計・事業設計・メンテナンス・顧客管理のすべてをコントロールすること。
そうしたノウハウから鉄道管理運営ノウハウも蓄積され、さらには「水道の面倒みるついでにあなたの街の交通インフラも面倒みますよ」という強烈な企業姿勢が誕生しているのです。
・・・日本大丈夫かあ・・・・
ちなみにルアスはなんと地域のチャリティー活動にも熱心だということを付け加えておきましょう。
ダブリンのがん患者団体、16歳以下のゲーリックフットボール団体などに熱心な慈善活動をしております。
「チンチン電車が慈善活動???」日本なら「廃線まじかの赤字路線にカンパを!」となるでしょう。
世界の考え方、アイルランド・ルアスの企業行動・・・日本は学ぶことが多すぎるのではないでしょうか?
そう、世界はグローバリゼーションの大嵐にいやおうなく巻き込まれていくのです・・・
とドキュメントチックになったところで、もし機会があれば今度はゆっくり鉄道旅・アイルランド長距離列車、インターシティーを紹介したいと思います。
「世界の車窓から」(テレ朝)・・・フルタチさんは見なくてもいいからコレは必ず見てくださいネ!!!