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2011年8月3日水曜日

☆【INJ Essay】☆「What’s the craic? 天気は悪いが今日も元気!わかふぇよしみのゴールウェイ徒然草」Vol 4~「夏のゴールウェイ2」☆


 
「夏のゴールウェイ2」

ゴールウェイは夏真っ盛り!最近やっとTシャツ一枚で外を歩けるような気温になってきました。
アイルランド人の服装と比べて、私はいつも1-2枚多く着ているのですが、日本人にとっては肌寒く感じる気温でもアイリッシュにとっては暑いらしく、私が今TシャツでOKということは、みんなはもう裸同然(笑)です。


 



さて、ゴールウェイは今一年で一番忙しい週を迎えています。先週Galway Art Festivalが終わり、今週からGalway Race Week(競馬週)が始まりました。国際的なアートフェスティバルと違いRace Weekは完全にトラディショナル、コンサバティブなアイリッシュによるアイリッシュの為のお祭りとなります。ゴールウェイはもちろんアイルランド各地からたくさんのアイルランド人がRace Weekを目指してやって来ます。Galway Race Weekはヨーロッパでも他に類を見ないユニークで大規模な競馬フェスティバルなのだそうです。何がユニークなのかは後でお話しするとして、この時期はホテル、B&B、ホステル、宿泊施設の部屋という部屋が満室となり、一般家庭でも、Race Weekに参加するために各地からやってきた親戚や友達を家に泊めてもてなすので、ゴールウェイは賑やかな一週間となります。地元の企業はこの週休みになるところが多く、遠隔地にいるゴールウェイっ子もこの時期は休みを取って里帰りしてきます。なんとなく日本のお盆のような雰囲気です。


ゴールウェイっ子は毎年Galway Race Weekをとても楽しみにしているのは、他のフェスティバルと比べて気合の入れ方が全く違うのでよく分かります。Race Weekはアイルランド人にとって特別なんだな、というのはうすうす気づいていましたが。。ギャンブル好きというよりも、どうやら競馬場での社交を楽しみにしているようです。毎年競馬の時期なると街の交通網はマヒしてすごい渋滞になるのでこの時期のわたしはおとなしくシティセンターに引きこもっていました。ので、まだ一度も競馬場に行ったことがないのですが、友達にどんなことが行われているのか聞いてみました。


 


毎年7月最終週に7日間かけて行われるGalway Race Week、去年2010年はのべ15万人の人が競馬場を訪れ、賞金総額1600万ユーを懸けてレースが争われました。そして総額1億ユーロもの賭け金が掛かりGalway Racesはアイルランドでは一番人気のある競馬イベントであり、ヨーロッパでも有数の大規模な競馬フェスティバルなのだそうです。




アイルランド人がどんな風にRace Weekの一日を楽しむかというと、まず競馬は基本紳士淑女の娯楽なので、できるだけのおしゃれをしていきます。女性はこの日の為にヘアドレッサーやビューティサロンで髪や爪やボディのケアを施し、10センチはあろうかと思われるヒールを穿き込み、ドレスに身を包みます。そして必須アイテムの帽子をちょこんと載せます。普段はスーツをあまり着ない男性もこの時ばかりはスーツで正装です。パリッとアイロンが効いたシャツにネクタイで女性をエスコートして歩きます。
ドレスアップしたら、ゴールウェイの中心地からレースコースまで普段は車で15分くらいの距離を1-2時間かけて直行バスや自家用車で移動して、チケットを買って場内に入ります。そして目当てのレースの馬券を買います。場内には競馬場併設の競馬場全体を見渡せる展望レストランがあり、レースを見ながら食事を楽しむこともできるし、他にもギネスビール直営のテントでビールを買うこともできるし、シャンペンが飲めるシャンペンテントにはシャンペングラスを片手にした有名人がたむろしているとか・・・ギネスのグラスが空くごとにレースにも力が入ってくるアイリッシュの姿が目に浮かびます・・・












7日間で42レースあるRace week中ギャンブルはもちろん、ほかにもファミリー向けのイベントがたくさん行われており、フェイスペインティングや遊具で遊べるコーナーも設けられるので、大人から子供まで誰にでも楽しめるようなイベントになっていて家族みんなで出かけたりもするそうです。また毎年Race Weekの木曜日はLady’s Dayと言って更に気合が入ります。女性はその年流行のドレスに身を包み、美しい帽子を被って出かけ、美とファッションを競います。その日ベストドレッサー賞が選出され、優勝者には8500ユーロもするダイアモンドのリングに加え賞金1000ユーロ、老舗婦人服店のお買い物券などがプレゼントされます。コンペティションにおいて、その他には「ベストおもしろ帽子賞」なんていう賞もあります。











競馬は年に一度、国民全体の社交場としての役割を果たしているみたいです。ソーシャライズが大好きなアイルランド人は普段は地元の行きつけのパブで日々のソーシャライズを、そしてGalway Raceでは年一度のソーシャライズを国民総出でしているのだな、と勝手に解釈してみました。実際、競馬場で遠隔地に住んでいる普段会えないような友達に会ったりするようですし、一年に一回、競馬場でしか会わないようなひともいるらしいし、ダブリンは元よりバスが通っていないような田舎町からもGalway Race Weekの為にやってきています。競馬には友達同士、職場の仲間で行ったりすることが多く、会場で賭けをしながら飲んだり食べたりおしゃべりを楽しみ、わいわいソーシャライズをするようです。そして、そこでまた新しい友達もたくさんできるのでしょうね。各界のセレブリティもたくさんやってくるので、もしかしたら重要なビジネスの取引や国家を動かす政治の話も進められているのかもしれません。


話のついでに、アイリッシュはどんな風にソーシャライズをするかというと、、日本とは違います。知らない人に話しかける、話しかける。アイルランドに来てパブに入ったことがある方なら分かると思いますが、アイルランド人はおしゃべりが大好き、知らない人にもどんどん話しかけますし、知らない人が話している話題にいきなり入って行くのもしょっちゅう。意気投合して一緒に飲み出す、なんてこともよくある光景です。おおらかで明るい人アイルランド人、誰とでもすぐお友達になれます。









さて、競馬が終わると、みんな市内に戻って来て宴が始まります。競馬場で大金を得た人はヘリコプターでシティセンターに戻って来る、というのが数年前までのステイタス、ケルティックタイガー(好景気)がまだ元気だったころは毎夕、競馬場から市内に戻ってくるヘリコプターの爆音が街じゅうにとどろいていました、ここ数年は静かになって来ていますが、それでもまだ今日もヘリコプターの音はしています。どんな人たちが乗っているのでしょうか?市内に戻ってきたら正装に相応しいあらかじめ予約しておいたレストランでディナーを取り、そしてパブへ繰り出します。
メインストリートはバリケードが張られその中は人ひとひと!!!パブに収まりきらない人たちがビール片手に道まで溢れだしてきますので、メインストリートは車の進入も止められグラスフリーゾーンとなります。この週は基本ビールのパイントはプラスチックのコップに入って渡されます。そして道にはビールを片手に飲む人で大混雑。なんだか日本の満員電車みたい。ビール片手に次のパブへと移動しながら飲む人もたくさんいて、歩行者&飲み天国。パブの外に出ても人を押し分けて前に進むという感じで、通り全体がパブ内のような様相です。





過ぎゆく短い夏の最後を刹那に楽しむGalway Race weekの市内でのお祭り騒ぎは夏を惜しむ儀式のようなものなのかもしれません。とにかく、飲む飲む!そして騒ぐ!みんな楽しそう!!まさに夏祭りですね。これが毎晩行われます。さすがに今日最終日ともなるとRace weekも大詰めを迎えてみんな少々疲れ気味ですが。。(笑)でもこの大騒ぎに、不景気もそのうち舌を巻いて逃げて行ってしまいそうな勢いです。もう、理性とかそんなの関係なく、飲む飲む。もう不景気とかも関係なく、飲む飲む!とにかく「今」目の前にあるビールと目の前にいる人との時間を楽しく事だけを考えて、飲む飲む!明日のことなんか考えずに飲む飲む!ラテン風の「今を生きる」精神とはまた違いますが、アイリッシュの悩みがあってもそれはまあ後で考えよう、なんとかなるよ!とビールを目の前にしたらもう「今」しか考えずに楽しみます。そして楽しんでいる人を抑制しません。





余談ですが、ゴールウェイはアイルランドの中でもパーティの街と呼ばれているくらいお祭りイベント好きな街なのです。絶えずいろいろなイベントやフェスティバルが行われているし、パブがこんなに連なっている街は他にないらしいです。なので、パブのはしごをするのも楽、飲みに行くにはもってこいです。ゴールウェイは結婚前の若者が男同士、女同士のグループでやって来て独身最後の乱痴気騒ぎを楽しみに来るところで有名な街でもあります。先に触れたGalway Race Weekがヨーロッパの中でもユニークと言われるのはこの雰囲気、競馬だけでなくアフターも楽しめて、他にはない楽しい思い出ができるからなのではないでしょうか?街をあげてパブ状態になってしまう観光都市としてのこのゴールウェイの懐の深さ、ホスピタリティー。いい所に来たな、と思います。


またまた余談ですが、私、昨日財布を無くしてしまいまして、今朝警察に行ったのですが、落し物の財布が山となって窓口の奥に積み上げられていました(笑)本当にたくさん!係りの人がこれ?あれ?といろいろ見せてくれたのですが、「あ、そうそう、その一番大きくて(お札で)パンパンに膨らんでるやつ!」と冗談を言ってしまいそうでした。アイリッシュだったら間違いなく言っていたでしょう(笑)。私の財布は買い物に行って無くしてしまったのですが、届けられていた財布たちはRace week中、パブやナイトクラブではしゃいで酔っぱらった人たちが置き忘れていったものであることには想像に難くないです。そんなことが普通に行われていることは一般的に考えたら日常的に起こるべきことではないですが、おそらく毎年起こっているのでしょう、こういうところがアイリッシュのおおらかでいいところなのではないかと思います。



Galway Race Weekの大騒ぎが終わると、夏の一通りのフェスティバルが終了します。そして秋の気配がしてきます。わたしもここでほっと一息つきます。実はアイリッシュもちょっとほっとつくのだと思います。でももうあと少し残っているこのGalway Race Weekを最後の最後まで満喫して、楽しむに楽しんで、そして過ぎゆく夏を見送るのです。

では、今日も張り切ってまいりましょう~♪




よしみ@わかふぇ 


Photo Courtesy:YOSHIMI HAYAKAWA

(アイルランド共和国現地 7/31ゴールウェイ電)