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2015年4月9日木曜日

「What’s the craic? 天気は悪いが今日も元気!わかふぇよしみのゴールウェイ徒然草」Vol 40~「アクマコン2015山本寛監督~ フラクタル が結んだご縁」Photo by ©Rian Creighton










Akumakon Event Photo Special Thanks
©Rian Creighton






Akumakon Event Communication Special Thanks
Akumakon Committee,NUIG









「アクマコン2015 山本寛監督~フラクタルが結んだご縁」


さる1月16日‐19日ゴールウェイ大学のアニメ研究会が主催するイベント「Akumakon 2015」が無事終了しました。
(アクマコンという名前自体に特に意味はありません。日本的な響きにしたかったという理由から命名されたそうです。念の為。)
今年で5回目になるこのイベントには第1回目からずっと関わって来ていて、知識はないもののアニメの国から来た日本人として何か役に立てればいいな、とお手伝いをさせてもらっています。
5年目となりやっとイベントの「いろは」が分かってきた今年のアクマコンは日本からビッグゲストを迎えるため期待感満載で準備にも力が入っていました。








「フラクタル」

時はさかのぼって2011年1月、第1回アクマコンの終了後、一通のメールが届きました。
以前ゴールウェイに滞在していた自称「アニメオタク」のA君からで、以前からWA CAFÉ主催の勝手なアニメイベントをやっていた私を「よしみさん、日本でこんなアニメイベントやっていたら誹謗中傷の嵐となりますよ。(笑)」と言いながらもアニメのAtoZをレクチャーしつつ手伝ってくれていた若者です。

で、メールの内容。
「最近日本で深夜枠で始まった『フラクタル』というテレビアニメ。ゴールウェイが舞台になっているに違いない。」

その数週間後、今度はアクマコンのメンバーが『フラクタル』について騒ぎ始めました。

「これはゴールウェイが舞台になっているに違いない!!」





(Courtesy of ©Galway Advertiser Left Photo: By ©Vincent Hughes)




そして、程なくしてゴールウェイの地元紙Galway Advertiserにも「フラクタル」が紹介されました。

これを見ていてアニメの力はすごいな~、と改めて驚きました。時間、空間、言語を軽々と飛び超え、日本とゴールウェイがあっという間に繋がっていたのです。やめろ、と言っても彼らは自発的にアニメで繋がっていくのでしょう。

「フラクタル」とは2011年1月から3月まで放映されたテレビアニメです。アニメ好きならみんな知っているアニメ監督の 山本寛氏(Ordet)によってリリースされました。
1000年後の世界、コンピューターが人間の社会を管理し、自分以外のほとんどの人間はコンピューター制御のもと暮らしている記号的な世界のなか、数少ないアナログ人間の主人公の「クレイン」が152,589番目のクローンとして作られたヒロインの「フリュネ」に出逢い、世界の真実を探す旅に出るというお話しです。
第2話の「ネッサ」の回ではゴールウェイの実在の場所、目抜き通りのショップストリートや聖ニコラス教会、ゴールウェイ大学に続く川べりの道、警察署などなど、ゴールウェイに住んだことのある人であれば、「あそこだ~!」とすぐわかる場所がいくつも登場します。
オープニングテーマはU2を意識して作ったという(山本監督談)Azuma Hitomiのオリジナル曲「ハリネズミ」で、エンディングテーマにはイェーツの詩を音楽にのせた、アイルランドの民謡「Down By The Salley Gardens」が使われています。「フラクタル」はアイルランドの美しさが各所にちりばめられたアニメとも言えます。






アクマコンが始まって今日までものすごい勢いでその規模を大きくしてきました。今ではアイルランド内屈指のアニメイベントに成長し国内はもちろんヨーロッパ各地からも参加者が集まるようになりました。
ゴールウェイ大学からもその成果を評価され、2014年のベストイベント賞を受け賜わったほどです。
過去のイベントでは元ジブリの木原浩勝さんや名探偵コナンの諏訪道彦プロディーサー、犬夜叉等も手掛けた作曲家の和田薫さんといった日本のアニメ業界の現場を支えている方々をゲストに迎え、日本サイドからも盛り上げていただいたことも功を奏しています。

そして去年の春。機は熟した、とだめもとで「フラクタル」を作った山本寛監督にコンタクトを取ってみました。
なんと、「アイルランド、しかもゴールウェイ大学のイベント。是非行きます。」とのお返事で、今年公開予定の映画の制作でお忙しいにもかかわらずスケジュールをやりくりして来ていただけることとなりました。













山本寛監督 in Akumakon 2015

ダブリンに金曜の朝到着し、月曜の朝旅立つ、という超短期の日程で山本寛監督のアクマコン参加が実現しました。
ヨーロッパの西の果てまで来ていただいているのに、日本国内の出張とも変わらないようなスケジュールの中、様々な催しに参加いただきました。

空港到着後すぐ日本大使館の渥美千尋大使を表敬訪問、その後車でゴールウェイへ。車中では長時間フライトの後にもかかわらず熱心に風景をながめる監督。
ホテルにチェックイン後、休む暇もなくアクマコンの開会式へ。大学ではすでにたくさんの来場者が列を作って入場を待っていました。
ワインレセプションには、ゴールウェイ市長をはじめゴールウェイ大学の学長や市の文化担当官、市会議員、地元ビジネスのまとめ役でもある老舗パブのオーナー等も参加し、
まさにゴールウェイ市あげての山本監督歓迎レセプションとなりました。
そして音楽は90年代レジェンドと呼ばれ活躍していたアイリッシュミュージックバンド「Eire Japan」が担当しFrankie Gavin, Paddy Keenen, Mareka& Junjiが「Down by the Sally Gardens」をサプライズ演奏し開会式を盛り上げました。

オープニングセレモニーの招待客の中には、アイルランド大統領であるMichael D Higgins氏も入っていました。
このMichael D Higginsという大統領はアイルランド西地区、特にゴールウェイで文化面、アイルランド語の啓蒙に大きな貢献をした政治家で、ゴールウェイのホープです。
なんと大統領は「フラクタル」11話を全部見たことがあるそうです。
アクマコンメンバーのひとりが別の機会に個人的にお話しをした際、その話しを聞いたそうです。
その日は別の公務でお忙しく、残念ながら大統領の出席はかないませんでしたが。。。フラクタルとゴールウェイはなんだか不思議な縁で繋がっている、と感じます。

その日のディナーにはゴールウェイの天然牡蠣で有名な「Moran’s」へ。たいそう喜んでいただきました。

翌日は、観光する暇もなく、地元のビジネスマンらとビジネスランチ。会合では今後も山本監督にゴールウェイを題材とし、世界中から観光客が訪れるきっかけとなるようなアニメを作ってください。お願いし、ゴールウェイ観光産業のリーダーらと親睦を深めました。

その後、大学にあるアクマコン会場に戻り今回のメインイベントであるトークイベントに出席。
前座として日本人のアイリッシュミュージックのフィドラーであり、アニメオタクでもあるRinoさんがフラクタル第2話に登場する「ネッサ」のコスプレで「Down by the Sally Gardens」を奏でました。

ここからはトークイベントでの山本寛監督のお話しです。箇条書きで簡単にご紹介しましょう。






●アイルランド、フラクタル、ゴールウェイへの思い●


・日本ではアニメの舞台というと北欧中心。

・アニメでファンタジーをやろうと思うとギリシャ神話かケルト神話に行きつく。だからアイルランドはずっと気になっていた。

・5年前ゴールウェイ、アラン島(イニシュモアー)へ。1週間のツアーでかなりの強行スケジュールでアイルランド中廻って取材。写真も捨てるところがない位に全てが絶景。食べ物もみんなおいしかった。それ以来アイルランドが大好きに。

・フラクタルのオープニングはU2を意識して作ってもらった。

・エンディングのテーマソング「サリーガーデン」もツアー中に思いついた。

・フラクタルはアイルランドからインスパイヤーされたものをそのまま表現。石灰岩、緑に覆われた岩。日本人にとってはすごく魅力的。

・ゴールウェイの天然牡蠣はとてもおいしかった。昨晩2ダース食べた。

・フラクタルで来て欲しいと呼ばれた事が嬉しかった。

・聖地巡礼をアニメで取り扱っている自分としてはアイルランド、ゴールウェイの風景が世界中の人に認められる日が来ると良い。

・トークイベント直前に5年ぶりにショップストリートを歩いていたら泣きそうになった。

・ゴールウェイは自分にとって第2の故郷、ずっと住みたいくらいだ。




●最新作、アイドル、聖地巡礼●


・今年公開になる山本監督最新作「Wake Up, Girls!」。7人の仙台出身のアイドルの女の子たちの話。

・きっかけは東日本大震災。復興支援になれば、という思いで作った。聖地巡礼としてたくさんの人が東北を訪れるといい。

・実は仙台とフラクタルは繋がりがある。2011年3月11日。フラクタルの最終作業をしている時だった。

あの時の日本の混乱を思い出すと震えが来る。作品を作っている者として次に何ができるか考えた。すぐに被災地へボランティア活動へ向かった。「フラクタル」の主人公の「クレイン」には2011年の自分の気持ちが80%くらい入っている。当時の原体験を表現している。

・その後、クリエーターとして自分に何ができるか考え、東北一番の都市、仙台を舞台にアイドルアニメを作り聖地巡礼という形で東北を応援している。

・「Wake Up, Girls!」には面白い試みがしてある。ハイパーリンクと呼んでいる。7人のアイドルキャラクターを実在の7人の声優が担当。同時にアイドルとしてデビューさせた。

本物&アニメ。同じユニフォームを来て同じダンスをする。ハイパーリンクとはアニメの世界を実体験できること。アニメ視聴者だった自分が本物のアニメの世界に入り込んだような体験ができる。

・アニメに「ワグナー」と呼ばれるオタクを登場させたら現実にも「ワグナー」が出現。

・アジアでは比較的日本のアイドル文化が受け入れられやすい。「Wake Up, Girls!」も徐々に浸透しており、タイやインドネシアではファンがダンスを真似したりしている。

・アメリカシカゴで行われたイベントには実際アイドルの7人を連れて行き、日本からも20‐30人の「ワグナー」もやって来て、1000人集客のライブを行った。

・仙台を舞台としたアイドルアニメ「Wake Up, Girls!」が世界を股にかけるアイドルとして成長し、日本文化の浸透、聖地巡礼の面でも役に立てないか、と考えている。







Q&Aでは、アニメの将来や展望やアニメ監督になったきっかけや何をしている時が一番幸せか、等々さまざまな質問が飛び出しましたが、気さくになんでもお答えいただけました。

私的には「作品を作る上で信念と思想が大事。」「日本のアニメの今後を担う30代40代のプロデューサーたちとの繋がりを大切にして、このひとたちが少しでも前向きな気持ちで作品を作ってくれるように話しかけている」という言葉が印象に残りました。

トークイベントの後は100人ほどの長蛇の列ができたサイン会、大盛り上がりとなったチャリティオークション、日曜のプレス取材、閉会式、打ち上げ会、と催し物は続き、あっという間の3日間のアクマコンイベントでした。
その中で、監督は疲れた様子も見せず、来場したアニメファンとも交流を図りアクマコンメンバーとも仲良くなって、最後はアクマコンメンバーが作った花道を通り、拍手で見送られるという名残惜しくも感動のお別れをしました。

山本監督は会社を自分で立ちあげられ、絵も描き、脚本も作り、監督もやり、きっと経営もみなくてはいけないでしょう、忙しすぎる毎日は容易に想像できます。
なのに、こんなヨーロッパの端っこの学生のイベントにも顔を出してくれ、朝から晩まで行事で埋まっているスケジュールを精力的にこなし、おまけに「鉛筆削りを貸してください。」とおっしゃっていたので、滞在中もホテルで仕事をされていたのでしょう。すごいな~、と感心していました。

監督自身は最初から最後までクールに淡々とスケジュールをこなしていましたが、フラクタルが結んだ日本・アイルランドのこのご縁は静かに繋がっていくと感じます。
また是非アイルランド・ゴールウェイを題材としてアニメを作っていただき、日本や世界中の人々がアイルランドを訪れてくれるようになるといいな、と思っています。
またご自分も自身の聖地巡礼として、大都会でのお仕事は大変でしょうからたまには心の洗濯もかねてアイルランドへ来ていただけたら、と思います。

アニメは言語を飛び越えて人と人を結ぶ力があるすごいツールです。そのツールを持っている人ですから世界がよい方向に向かって行くよう、益々のご活躍をお祈りします。




さて、昨今のアニメブームですが、アイルランドでは去年1年間に大小様々、23もの新しいアニメイベントが発足したそうです。
その中でもアクマコンは学生主催、本物の日本のアニメにこだわり、文化交流、地域市民を挙げてのサポートという点で他とは完全に類を別にしており、年々発展を遂げています。
これには「何でもウェルカム」「お祭り好き」「外国人の街」というゴールウェイならではの地域性もあるのでしょう。

日本でこれを読んでいる方!ゴールウェイは美しくまたおもしろい所なのでみなさんも是非来てくださいね!
それにはまず、「フラクタル」を買って予習!(笑)

さぁ、今日も元気にまいりましょう♪


PS. あの3.11の震災からもうすぐ4年ですが、ゴールウェイより皆さまの幸せと東北の復興を応援しています。




Photo Courtesy:YOSHIMI HAYAKAWA

(アイルランド共和国現地 2/26ゴールウェイ電)


#セントパトリックスデー関連行事のため掲載が遅れましたことをお詫びいたします。(編集部)
また日本時間2015/4/9に山本監督からのゴールウェイの皆様へのメッセージを収録いたしました。


「There’s no place like Galway! 」

Yutaka Yamamoto love for his adopted home city! 

(Program filming 09/04/2015 at Tokyo Japan)






Hello everyone in Galway.
I’m Yamamoto.

Now I’m working here in Tokyo, Japan.

I got a chance to visit Galway in this January.
Because it was winter, I had worried how it would be cold, how the landscape would look like, and how trees had fallen leaves…

But, the landscape was beautiful and exactly the same as last time when I visited there five years ago.

I very much enjoyed oysters as well. I could eat oysters every day.

I want to come over there again!
I wish I come over to you any time when I get called. Please give me a call whenever you need. I look forward to seeing you again.



9, April 2015
Yutaka Yamamoto  #LoveGalway








©Rian Creighton Akumakon Collection