「Akumakon アニメイベント!
日本アニメ界の大物仕掛け人2人が・・・!
ゴールウェイに!!
参上~~!!!」
木原浩勝&諏訪道彦 @「Akumakon」
【訂正とお詫び】
木原さまから下記のコメントを頂戴しました。
「角川書店より発刊されておりますニュータイプ3月号にはアイルラ ンドの記事が掲載されておりません。 正しくはニュータイプ4月号3月10日発売に掲載になります。」
お詫びして訂正させていただきます。
木原さまから下記のコメントを頂戴しました。
「角川書店より発刊されておりますニュータイプ3月号にはアイルラ
お詫びして訂正させていただきます。
3.10の4月号に注目です。
✈今回はセントパトリックスデーの前にアイルランド:ゴールウェイからのスペシャルリポートです。
「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」に憧れた時代がありましたが、このような形でクリエーターの木原さんや諏訪さんに出会えるとは、人生わからないものです。いや===アイルランドって本当にいいですね。木原さん、諏訪さん、早川さん、超多忙のなかありがとうございます。今度取材でどっぷりアニメ&アイルランド聞かせて下さい」~INJTOKYO TAZより御礼✈
去る1月19日、20日の2日間、たぶんアニメの本家本元の日本でもこんなことはめったに起きないんだろうな、というアニメのビッグイベントがここゴールウェイで行われました。
今年3回目になるゴールウェイ大学のアニメサークル主催によるアニメイベント「Akumakon」に、日本からスペシャルゲストとして、2人のアニメの大物仕掛け人がやってきました。
あにめの大物仕掛け人・・・。その方々とは・・・。
木原浩勝氏
作家。新耳袋の原作者。スタジオジブリでは制作デスクを担当。「となりのトトロ」などを手掛けた。
諏訪道彦氏
読売テレビ名探偵コナンやシティハンター、金田一少年の事件簿、等など様々なテレビアニメを世に送り出してきた名プロデューサー。
今年の「Akumakon」の目玉イベントとして設定された、この超豪華ゲストによるトークイベント。
2時間たっぷりおしゃべりしていただきました。日本からはるか遠いアイルランドでもアニメはどんどん人気を増してきています。
それらを見て育っている今日の若者は、いつかは日本に行ってみたい♪なんて、ほのかな憧れを抱いていたりするんです。
それが、今回日本から本物が来て直にアニメのお話しをしてくれちゃったわけですから、会場は大盛り上がりでした。
日本やフランス・ロンドン等のアニメイベントとは比べ物にはなりませんが、それでもこのヨーロッパの端っこの小さな街で行われるイベントとしては大盛況。
2日間通して集客数は、700名以上。一回目の2011年250人、2回目2012年400人と比べると大した成長です。今回は2時間のトークイベントだけで300名近い数のお客さんが集まりました。
アニメの制作現場についてのトークイベント。
木原さん、諏訪さんお二人とも本当にアニメが大好きなんだな、ということが聞いてる方にもひしひしと伝わるお話しでした。
そしてお二人ともサービス精神が旺盛!こうして自分より、人のこと、と思える人がこういうエンターテイメントを支えているんだな、と感じました。
後から、何人もの若者に、「彼らの情熱にインスパイヤーされたよ。」「こんな風に日本のアニメは熱い思いを持って作られているんだね。」「僕もいつかはアニメの勉強をしに日本に行きたいんだよ。」なんて話を聞きました。
真剣な思いは通じるものです。。。
では、今回は超豪華ゲストのうちのおひとり、木原浩勝氏にINJの為に今回のアイルランド訪問についての書き下ろしエッセイをいただきました。
3年前にふらりとWA CAFEにお寄りになっていただいたのが縁で今回のトークイベントに繋がりました。
木原さんと諏訪さんのご好意に本当に感謝です。そして、日本から同行してくださり、協力いただいた関係者の皆様も本当にありがとうございました。
今回のアイルランドツアーに関しては、日本で一番売れていて一番有名、というアニメ雑誌
月刊ニュータイプ3月号(発売中!)にも木原さんがゴールウェイでのアニメイベントについて原稿を書いてるとのことです。皆さん、Check it out!ですよ。
月刊ニュータイプ3月号(発売中!)にも木原さんがゴールウェイでのアニメイベントについて原稿を書いてるとのことです。皆さん、Check it out!ですよ。
そして諏訪さんのウェブサイトにも紹介されています。
Irish Network Japan の為の書き下し
去る1月19日、私こと木原浩勝と、アニメ「名探偵コナン」のプロデューサー諏訪道彦さんは、同行したスタッフ2名と共に、アイルランドのダブリン空港に到着しました。
この4人で、アイルランドの地を踏むには随分と時間がかかりました。
私にとってアイルランドは、憧れの地でした。
そのきっかけを与えてくれたのが、子供の時にみた映画『静かなる男』(主演:ジョン・ウェイン)という作品でした。
白黒作品でしたが、そこに映し出された風景や、その土地の人々の気性、生活習慣が、これまで見ていたアメリカ映画などとあまりに違っていて、魅力的にうつったのです。
やがて大学を卒業し、スタジオジブリというアニメ制作会社を退職した後、ちょっとしたきっかけでマンガの原作を手がける事となったのです。
せっかくのチャンスだからと、私のマンガの中に必ず出すと決めたのが、子供の頃からの夢だったアイルランド、それもアラン諸島の一つ、インシュモア島でした。
ここまで書くと、なかなか順調の話のようにも見えますが、マンガは紙面の途中で4巻で第一部が終わるという形で、2002年に連載の幕を閉じたのです。
マンガは途中で終わったものの、未完結のために、もう一度一からやりなおしたい、長くそう考えていました。
今度やるときは、少ない資料を探しまわって書くというものでなく、一度マンガの舞台になった場所をこの目で見ておきたい、そういう強い念にかられていたので、仕事の依頼もないというのに取材したいという気持ちのみで2009年の5月、初めてアイルランドの地に立ったのです。
ダブリンからバスでゴールウェイへ。
ゴールウェイから船でインシュモア島へ。
……島に降り立った私は、その風景に感動をおさえられませんでした。
写真でしか見た事の無い風景、それは単なる自然の風景ではなく、人々が長い時間をかけて永々と築き上げた蜂の巣にも似た大地の石垣の風景でした。
世界広しと言えども、農作物の収穫のためだけにこれほどの人口建造物を造り、なおかつ、その建造物そのものも島の自然の一つとして一体化している場所があるだろうか、と思ったからです。
さて、2日ほどインシュモア島のあちこちを歩いてまわり(これはキツかった)再びゴールウェイへ。
……この小さな港町を歩いていて、偶然「WA CAFE」と出会うのです。
そりゃもう、その発見は、衝撃以外の何ものでもありませんでした。
こんな日本から、時間で16時間もかかるような北極圏に近い島の端で、日本語のカタカナ文字「ワカフェ」と書いてあったのですから。(もちろん英語表記も書いてありました)
「日本の店がある! 入ろう! 入ろう!」
喜び勇んで店内に入り、久しぶりにフィッシュ&チップスではなく、日本食のメニューを目の当たりにしたのです。
生き返るような思いとは、まさにこういうこと!
そのオーダーをとって下さったのが、この「WA CAFE」のオーナー・早川芳美さんでした。
こんな所に日本人が……。
当然日本では当たり前の出会いが、この地では感激となります。
「日本からいらっしゃったのですか?」
これが後に繋がる、不思議な縁の始まりだったのです。
オーダーをお願いした後、手持ち無沙汰にふと横をみると、マガジンラックにはなんと日本のアニメ雑誌があり、首を捻りつつも手にした一冊は「フィンランド航空」の機内誌でした。
開いてみると、三鷹の森「ジブリ美術館」の特集ページ。
そのトップを飾っていたのが、子供たちが遊ぶ巨大なネコバスの写真でした。
食事が届いたとき、思わず、ここに紹介されている「となりのトトロ」の制作スタッフだったんですよ、と話して、その記事の上にサインをし、名刺を一枚挟んでおいたのです。
この一枚の名刺が小さく細い絆の一本として、メールをやりとりする間柄になりました。
ごく時々のもので、そんなに深い話が交わされた訳ではありませんでしたが、思い出した頃にメールが来る、本当にその程度のものでした。
そこへ、2011年3月11日、東日本大震災がおこります。
この時、遠いかの地のアイルランドで、少しでも日本の役に立ちたい、と立ち上がってくれたゴールウェイ大学の学生をまとめて下さったのがこの早川さんでした。
頑張れ、日本。というビデオレターがアイルランドから届きました。
と同時に、その映像の中には、赤いTシャツに白い文字で、頑張れ、日本、と染め抜かれたスタッフTシャツを着た数多くの若者たちが、そこにいたのです。
細くなりがちな日本とアイルランドのメールのやりとりは、これを期に再び息を吹き返します。
一方その頃、アイルランドのゴールウェイ大学に通う学生たちが、執り行う学園祭「Akumakon」のスタッフたちが、一つの企画を立ち上げ始めていました。
私が「WA CAFE」に残したサインと名刺、彼らの多くは大の日本のアニメとマンガ好き、更に彼らの夢はゴールウェイに秋葉原のような店ができて欲しい、というものだったのです。
ところが、アニメ好きの日本人など滅多にこの地を訪れてくれません。
イギリスより北の地に、アニメの話をしてくれる人は来てくれないのだろうか?
その時に見つけたのが、機内誌のサインだったのです。
ありがたいことに、来てくれるかどうかもわからないというのに、私をアイルランドに招こうと、少しずつ少しずつ、学生たちはお金を出し合って、基金のように貯めていてくれました。
そこへ大震災。そんな話がきりだせるような状況ではなくなりましたが、逆にこのことがきっかけで、学生たちがいかに本気で日本のアニメに憧れを抱いているのかが伝わってきたのです。
そして2012年の1月、「WA CAFE」の早川さんの手元に1通の葉書が届きます。
なんのことはない、私の事務所が出した年賀状。
しかし、この年賀状が、早川さんにとって学生たちのために日本からお招きするチャンスかもしれない、という起爆剤になったのです。
この年の夏、早川さんから1通のメールが届きます。
2013年の1月、ゴールウェイ大学で開かれる「Akumakon」で、日本のマンガやアニメを語っていただけませんか……? というものでした。
遂に来た! 私が嬉しかったのは、以前この地を訪れた時に、アイルランドが大好きです。だから必ずもう一度やってきます。という約束を果たせる事と、東日本大震災で日本のために義援金を集めるイベントを開いてくれたゴールウェイ大学の学生たちに恩返しが出来る、この機会を待っていたからでした。
こんなチャンスは滅多にない、そう思って、現在も現場の第一線で働く何人かのアニメ関係者の方々に打診してみました。
アイルランドで学生たちに向かって、日本のアニメを語りませんか? ……と。
その呼びかけに真っ先に手を挙げて下さったのが、「名探偵コナン」のチーフプロデューサー・諏訪道彦さんでした。
長くなりましたが、このような時間と人とのつながりの中で、今年の1月19日、私と諏訪さんとスタッフ2人の4人で、ダブリン空港に降り立ったのでした。
空港で出迎えてくれたのは、「Akumakon」のスタッフの女性と、アイルランドの日本大使館員・山田さんでした。
話には聞いていたように思うのですが、実際に大学生のお祭りのスタッフと、日本大使館の職員の方が同行して下さったのは、安心よりも驚きでした。
目指すゴールウェイという土地は、首都・ダブリンからバスでおよそ3時間ほどの距離にある、歴史深い中規模程度の田舎の港町。
しかも公式イベントというよりは、小さな学園祭の一部。
その案内に、大使館員の方が来て頂いたのですから、現地で頑張る早川さんが、いかに苦労してアイルランドと日本とを結びつけようと努力されていたのかを強く感じました。
とりあえず、日本ではあり得ない事でしょう。
学生のイベントのサポートに、お役人の方が同行してくれるなんて。
それも、文化交流の名とはいえ、いわば語る内容が、アニメやマンガだからです。
ゴールウェイ到着、「WA CAFE」で久々の再開を喜び合い、思い出話を語る時もないまま、ゴールウェイ大学へと直行したのです。
学内で出迎えてくれたのは、「Akumakon」執行部のリーダーをつとめるジェームス君とそれを支えるおよそ16人ほどのスタッフたちでした。
通訳には、現地在住の日本人の方がいて下さったので、言葉に関しては一切問題がなく、互いに注意事項や約束事を確認しあって、出番を待ったのです。
ちょっと話は変わりますが、子供の頃にみた映画『静かなる男』に登場する全ての人々は、みんな質素で礼儀を重んじ、習慣を大切に守るとっても頑固な人たち、粘り強い人たちという印象を持ち続けていました。
更には、アイルランドやインシュモア島の風景のあちこちに見られる石垣の数々が、その証拠のようにずっと目に焼き付いていたので、きっと今もそれが根強く受け継がれている……などと思い込んでいたら、大違いでした。
親切でおとなしくという点はなるほど映画通りでしたが、驚くほど男女の差はなく、シャイなんです。
もう、本当に、みんながみんな、恥ずかしそうにはにかみながら笑顔を垣間見せるその姿は、映画と違う事はもちろん、60年代の日本の人々を見るかのような思いでした。
学内に設けられたステージの奥に、私と諏訪さんが座ると、まずは歓迎の歌と踊り、などというとアイルランド民謡が始まりそうな勢いですが、音楽はジブリソング、奏でる3人娘は全員初音ミクのコスプレ。しかも驚いたことに、ギターやバンジョーを演奏しているのは、3年前にインシュモア島を案内してくれた日本人ガイドのけんちゃん(通称)でした。
サプライズの曲は、初音ミクでも有名なフィンランド民謡「Ievan Polkka」。それもどこから入手してきたのか、長ネギを持って歌って踊るという、楽しい時間でイベントの幕が開いたのです。
開いたはいいのですが、司会を務めるジェームス君は、もう緊張でガチガチ。
嬉しくて嬉しくてしょうがないけれども、どこから手をつけたらいいか解らないという緊張っぷりが、すぐ横から伝わってきます。
テーブルを見ると、聞きたい事や司会進行のための入念な打ち合わせをしたであろう、びっしりと書き込まれた紙が何枚もあるというのに、しどろもどろになって上手くしゃべれません。
あぁ本当に彼らは素朴で純情なんだと、しみじみと感激する私。
とはいえ、イベントがこのままでいいわけではありません。
ありがたいことに、司会のジェームス君が緊張していることはともかく、300人近いお客さまも(コスプレ多数)同じように緊張してガチガチなのが見てとれて、妙におかしかったです。
この緊張を崩して学生たちの目を輝かせたのが、諏訪さんのお話でした。
その内容が、「日本のマンガ雑誌の今」といえばいいでしょうか。
おもむろにテーブルの上に雑誌が15冊ほど。諏訪さんが重いのを覚悟で日本から持って来たマンガ雑誌の数々。
これに、司会者も会場も、一気に驚嘆します。
日本人でコンビニエンスストアに一度でも行った事のある人ならば誰でも知っていますが、一ヶ月に出る日本のマンガ雑誌はこんなものではありません。
少年誌、少女誌、週刊誌、隔週誌、月刊誌、隔月誌に季刊誌。
ジャンル別に、子供向けやアダルトまで加えると、一体どれだけの数のマンガ雑誌が動いているのか、諏訪さんですら解らないと話した瞬間、横にいたジェームス君が「本当に日本はマンガ大国なんだ」とつぶやきます。
更に、アニメに至っては、専門誌の3冊で紹介されている作品の量に圧倒されるという一幕もありました。
百聞は一見にしかずとはまさにこういうことですね。
後は、質問コーナーと日本から大量に持ち込んだポスターやカレンダー・フィギュアなど、グッズの数々を抽選大会でプレゼントすると、もう会場は大騒ぎ!
おそらく、これまでの講義などなかったことになるのではないかと思うほどの興奮ぶりでした。
大役を終えると、気分はもうお客さんモード。
コスプレをしている学生と話をしたり、学内に臨時で作られた手作りの日本のアニメグッズコーナーなどなどを見学。
気がつくとすでに外は夜。
ジェームス君から「今日はもう終わりですから、一緒にパブに行こう」と誘われました。
パブ?
てっきり大学を出て町中にでも繰り出すのかと思いきや、会場を出てわずか20歩ほどに、カレッジバー。中に入ってみると、そこは学生で溢れかえったまさにパブ。
知りませんでした。アイルランドの大学は、校内に本格的なパブがあるんですね。
ビールはもちろん、バックバーにはアイリッシュウイスキーがずらりと並んでいます。
なんでも、夜になって職員がかえった後は、学生が運営しているとか……。
私は知りませんでしたが、日本では飲酒は20才からですが、アイルランドでは18才からOKなのだそうですね。ビックリです。
もう一つ、日本人の私たちが驚いたことがあります。
アイルランドの人たちは、お酒を飲む時に、おつまみなどの軽食をすることがないんですね?
町中のパブでも、いったん家に帰って食事を済ませた後、パブに繰り出して、ただお酒だけを飲むんですってね?
これには、ワイン好きの諏訪さんもビックリしてました。
酒を飲んでの学生との大騒ぎは、深夜近くにまで及んだのでした。
その後私たちは、早川さんの案内で、アッシュフォード城見学に……。
何故、アッシュフォード城?と言われそうですが、日本で放送された大ヒットアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」の中に出てくる高校に、アッシュフォード学園という名が登場します。
このネーミングのきっかけになったのが、この城かも? ということで、見学をお願いしたのです。
初めて見ました。本物の城というものを。
正確に言うと、王侯貴族の別荘という感じでしたが、それでも歴史を感じさせるその外観には圧倒されました。
「さぁ、中にはいって食事をしましょうか」
と、早川さんに声をかけられて、更にビックリ。
お城に着いたらお食事をしましょう、と聞いてましたが、城の中で食事が出来るとは思っていなかったのです。
案内された場内は、何もかもが昔のままに保存され、荘厳そのもの!
正直言って、日本から来た庶民もいいところの私たちにとっては、こんな所に入っていいものか? と敷居が高かったです。
さて実際に目の前に出された食事のすばらしい事!
中でも、サンドイッチなどに使用されていた、本場ご当地のサーモンを使ったスモークサーモン、いやぁこの味には驚きました。
52年間生きてきた中で、これほど香り高い豊かな味のスモークサーモンを食べた事はありませんでした。
これを食べる事が出来ただけでも、この地に足を運んで良かったなと思いました。
とにかく、城という風景が珍しいので、食後は私と諏訪さんの二人で、撮影タイム!
子供のようにはしゃぎ回りながら、写真を撮りまくったのです。
城を後にした帰り道のこと。
車内でガイドブックを見ていた諏訪さんが、大きな声を上げました。
「この近くに、ストーンサークルがありますよ!?」
私は日本では、怪談やオカルトに詳しく、本を出版したり、映画化されたりもしています。
これを見ないわけにはいきません。
地図をたよりに発見してみると、そこは何と羊が群れる牧場のど真ん中。
石垣を乗り越えて中に入ると、羊のフン、フン、フン……。
これを踏んづけたら後で車内が大変な事になるとばかりに、なんとか避けながらもストーンサークルを見学、まるで戦場で地雷を踏まないように歩いている兵士のような気分を味わいました。
アイルランドのストーンサークルは、日本で紹介されているイギリスのストーンヘンジとは違って、実にシンプル。
本当にただ、岩を環状に並べただけで、いつ、誰が何の目的でこのようなものを作ったのか、伺い知る事ができない不思議な気持ちを味合わせてくれたのです。
翌日、ゴールウェイを離れ、早川さんの運転する車でダブリンへいきました。
この日は、アイルランドの日本大使館にご招待頂きました。
館内の厳しいセキュリティチェックを終えて、大使館に入ると、山田さんが出迎えて下さいました。
そして、ご紹介を受けたのが、日本全権大使の渥美大使です。
「わざわざ日本からありがとうございます」とその労をねぎらって下さいました。
大使も、アニメやマンガが日本の大切な文化であるということを大変良くご存知で、そのためならば出来る限りの事はしたいと考えています、という勇気づけられる言葉まで頂いたのです。
更に、この地には、「Kwaidan」を世界にしらしめた、小泉八雲ことラフカディオハーンのお孫さんがいらっしゃるというお話を伺い、怪談作家の私は、この次にアイルランドに来る時には是非お会いできたらいいなとかすかな希望を抱いて、そして、色々な方からアイルランド怪談の取材が出来ればと心を躍った次第です。
もちろん、ダブリンに来て本家本元のギネスビール本社工場を見学しないわけにはいきません!
私はお酒が飲めませんが、世界で名高い歴史あるビール工場は、この目でしかと見てみたい!
原料から始まって、ビールが出来るまで全てを見学。
日本でも飲めるギネスビールは、このように作られるのかと知って、更に感動しました。
見学を終えた後、さぁホテルに帰ろうか、と話しているその目の前に、馬車が停めてあります。
「あなた達、よかったら乗っていきませんか?」
とおじさんに声をかけられました。
馬車にのってホテルに帰るなんて、日本ではそんなに味わえる体験ではありません。
何事も体験だから!とばかりに、全員で乗車。
私たちも案内をして下さった早川さんも、馬車に乗るなんて初体験!
石畳を走るガタガタとした揺れを感じながら、町中を走るこの爽快感。楽しいったらありゃしません。
あっという間にホテルに着いてしまったので、下りるのが寂しかったくらいです。
これでアイルランドの旅は全行程を終了して、無事に終わりました。
毎日毎日が、出会いと発見、楽しくて楽しくて仕方が無いアイルランドの一週間が終わったのです。
今回の旅でしみじみと感じたのは、懐かしさのようなものでした。
日本と同じような、島国の人間だからでしょうか、高度成長期の時代から徐々に無くしていったかつての日本人の心の安らぎのようなものが、ここアイルランドには時が止まったかのように今も生きています。
ずっと日本で成長したせいで忘れていた、何か大事なものを、人々とのふれあいの中で再発見したような気持ちを持ったのです。
自然や歴史を失う事なく、共存しながら暮らしていく人々との会話は、何時間続いても飽きる事がありません。
果たして、今の日本に、自分たちの国や土地のことをこれほどの笑顔と誇りを持って語る人がどれほどいるでしょうか?
かつて頑固一徹といわれたアイルランド人の気質は、どれほど時が経っても、豊かになっても、都市化が進んでも決して変えたくはないという気持ちの中に、根強く残っているのだと痛感しました。
心の底から、学ぶべきことの多かった貴重な一週間だったと感じたすばらしい旅だったのです。
今の心は既に、またアイルランドに行きたいという気持ちで満ち満ちています。
今度もまた、マンガで、アニメで、そして怪談取材で、この地を踏みしめるぞーーー!
木原浩勝
✈アイルランド、ゴールウェイが登場します✈
アニメ「フラクタル」をアイルランド語で!!!