「萌えの春」
皆さま、お元気ですか?
日本からもう桜の開花のニュースが入ってきています。
今年の日本の春は少しだけ早くやってきているようですね。
こちらアイルランドは暦の上では春真っ盛りのはずなのですが、日本とは反対で今年は春の訪れが遅めのようです。
今年の冬はsnow storm(吹雪)だの、floods(洪水)だの、とかなり厳しかったのでみんな春の到来を今か今かと待ち遠しく思っているのですが、本格的な春の訪れはもうちょっと先のような感じです。
春先のアイルランドは、天気が特に変わり易く、晴れていたかと思ったら、急に雨が降ってきたり、また晴れたと思ったら、今度はいきなりバババババ・・・と雹が降ってきて、一瞬のうちにあたり一面が真っ白な雹で覆われてしまったり、とアイルランドやイギリスの天気を表現するときによく言われる「一日のうちに四季がある」天気を毎日のように体験できる楽しい(?笑)時期です。
朝、外は太陽キラキラだから、と迂闊に軽装で出かけると大変なことになります。
この時期、中身は軽装でも外は冬用のフード付きのジャケットを来て出掛けるのが一番です。いつ天気が変わっても対応できるからです。
ゴールウェイでは誰も傘なんて差しません。
降ってもすぐやんでしまうし、風が強すぎて傘をさしてもすぐ骨が折れてダメになってしまいます。
ゴールウェイでは傘が何本あっても足りません。(笑)
Galwegian(ゴルウェジアン=ゴールウェイ人)は雨が降ってきたら、ササッとフードを被って歩き続けます。。
雨が降ってきても慌てず騒がず、ぱっとフードを被るのみ。
そして、太陽が出てきたら、すかさずジャケットを脱いで太陽を浴びる。
ジャケットの下はかなりの軽装だったりします。男性ならTシャツ一枚、女性ならタンクトップにカーデのような。。(日本人がこれを真似したらすぐに風邪を引きますので、ご注意を!)
そしてどこに隠し持っていたのか、サングラスを取り出してササッと掛ける。
もっと天気がよくなると、(仕事や学業はどうしているのだろう?と疑問ですが)時間・曜日に関係なくみんながみんなコリブ川のたもとにあるスパニッシュアーチにやってきて日向ぼっこを始めます。
まるで啓蟄です。
そのようなお天気の日がこの3月初めにあったので、これで春到来、やれやれと思っていたのですが、そんな天気の良い日はそれっきりでまた冬に逆戻りしてしまいました。
三寒四温という言葉が懐かしいです。
たまにはなんの心配もなく(また降って来るんじゃないか、という・・・)確実にやってくる気配を感じながら穏やかに春を迎えたいものです。
話は変わりますが、「萌え」というのは日本人独特の感性のようですね。
友人の旦那さんに、某国のオタク研究の権威のような人がいるのですが、その人が言っていました。
現在ではアニメ用語やオタク用語のようにもなり、違った意味合いで使われたりしている「萌え」ですが、もともとの日本語の意味では「草木が伸びる様」を現わしています。
そしてオタクの権威さんが言うには「萌える」とは日本人が昔から持っている日本人特有の感性で、小さなもの、またはかわいいものを見た時に生じるほのかな感情を表す言葉だ、と言います。
日本人であれば「萌え」の正しい使い方はちいさな声で「萌え」(うつむき加減で恥ずかしげに、奥ゆかしく・・・笑)
というのがベターで、「モエ~~!」という言い方はちょっと違うよ、、、なんて言っていました。
面白いですね。「萌え」は春の季語なんですね。
私的にはまだ季節的に春とは言えない時期に、裸木にちいさなちいさな芽が出て来たのを見つけて、ほわっとした気持ちになるとき、これが物理的な「萌え」であり、心理的な「萌え」でもあるのだろう、と考えます。
ただ単に「芽吹いてきた」ということをそう言っているだけ、、、といえばそうなんですけど・・・。
「萌え」とは小さな感情が芽吹いたことを表現する言葉でもあるのでしょうね。
かわいいものを見て「ときめく」気持ち。
なんとも表現しにくい、そこはかとない気持ち。
じわじわと春の息吹を感じるこころ、ほのかに春を喜ぶ気持ち、本当にあるかないか分からないくらいの微妙な変化をこころに映しとっていく。
日本人はこんな四季の移り変わりがあるからこそ、繊細なんでしょうね。
そしてその微妙な気持ちを誰にも言わずに自分の中にしまっておく奥ゆかしさも「萌える」の延長線上にありそうな気がします。
さて、私的にはここアイルランドでの春はこのような「萌え」ではなく、違った感情を抱きます。
アイルランドには四季はあるにはあるものの、徐々に変わっていくというよりも、季節の変化はある日突然起こります。
予兆なしに変化が起こります。
寒くなったり、暑くなったり、降ったり、止んだり・・・。
例えて言うならば、行方知らずだった兄貴が何の前触れもなく帰ってきたような、そんな懐かしさと突然さです。
「おー、久しぶり!元気だった?」と帰ってきた兄貴に
「もう~、お兄ちゃんどこ行ってたのよ~。心配したんだから~。」と文句のひとつも言いながらも「やった~!お兄ちゃんが帰ってきた!」
と大歓待する感覚です。
そして「帰るよ。」と言いながら帰って来ないときもある。(笑)(夏が来なかった年は悲しい思いをしました。。)
アイルランドの春はある日突然やってきます。
その日が来ると、まるで野原に花火が上がったように、ポンポンポン、と花が一斉に咲き出します。
暗転後の舞台セットのように今日と昨日とでは全く違う世界となります。
見ている私は、突然の変化に戸惑いつつも、その華やかさに目を奪われ、あっと言う間に厳しかった季節の事を忘れてしまいます。
厳しい冬があるからこそ、こんな華やかなご褒美があるのでしょうか。
そんな季節の変化に慣れているアイルランド人は、忍耐強く、突然の来訪者もこころよく迎える心温かい人々で、
どんな状況でも楽しもうとする人々です。
天候が国民性に大きな影響を与えていることは間違いないですね。
このエッセイを書き始めた2‐3日前は、まだ寒い雨の日で、外歩きも億劫な暗い日でしたが、なんと「今日」春が来たようです!!!
外はキラキラ太陽、すみきった青い空には飛行機雲が何本も描かれています。
きっと今日はあちこちで花が咲き始めているのでしょう。。。
こんな日は車を駆ってコネマラ方面でもドライブしてこようかな??
そして今日から夏時間がスタートしました。全てが1時間早めのスタートです。
PCもスマートフォーンも自動的に時間が変わりましたが、人間はそんな風には変われません。
しばらくは朝の早起きが辛そうです。
では、今日も元気にまいりましょう♪
Photo Courtesy:YOSHIMI HAYAKAWA
(アイルランド共和国現地 3/30ゴールウェイ電)